第五期構成員一斉卒業の決定と、第六期の展開について。


1993年の結成当初から、夢歩行虚構団(以降ユメホと書く)は様々な変遷を辿り、「劇団員制度」の在り方も、それぞれの期(第一期~第五期)により変動を続けて来ました。
第二期~三期のとある期間が、「登録している構成員」(ユメホでは、劇団員のことを公式には"劇団構成員"と呼びます。)の数が一番多く、30名を越えるような時期もありました。
ユニットではなく、プロデュース集団ではなく、「劇団という組織」なのだという気持ちが強く、私たちは「ユメホの外・ユメホの内」というふうに、区別をして来ました。今もその意識は変わりません。
第四期・第五期で言えば、構成員(ユメホの内)には、俳優も裏方も、1年に2~3度、必ず「出演・参加」の機会があります。(定期公演があるので。)
そして、定期公演に出演・参加する度、それぞれの俳優・裏方個別のステップを作り、稽古期間中にそれを上ることで、個々人のステップアップをし、群れとして成長をする、という考えです。
客演さん(ユメホの外)に対しては、既にその人物が習得をしている技術や歴史を纏った状態の「今のその人物」に出演して戴くわけで、ステップの用意やレクチャーは基本的にはせず、あくまで「guest」という捉え方で来ました。裏方さんも同じくで、「今のその人物」を見てオファーをし、その人物のキャパの中でシゴトをして戴くというスタンスです。
平たく言えば、「育てるのは構成員だけ」です。
基礎力が劣化しない為、公演稽古期間中以外でも希望があれば個別レッスンがあり、数は少なくても基礎を失わない定期稽古を置く等、して来ました。
しかしながら、こういうものはかなりの力を使って運営しないと、形骸化していくものです。
基礎をベースとした定期稽古に、参加するメンバーと参加しないメンバーは、分かたれ、固定化していきました。(ユメホは、専業俳優と兼業俳優の両方を同じ数ぐらい抱えるので、どうしても社会人や学生は、参加率が落ちる傾向にありました。「暮らしていく為の軸」を持つ人に強制はしないので、そうなるものだと思います。良いとか悪いとかではありません。)
私が、ユメホの第四・五期で目指したのは、「基礎力の劣化を招かない為の基礎練習反復の機会の確保」「年間に必ず数回の出演の機会の確保」でした。
これは「劇団組織」である限り、最低限の約束であると信じましたし、「ただやれればいい」という考えに至らない為の覚悟でした。
誰もが大人になれば、自らの軸を定める(希望しない軸の場合もありますが。)ものだと思います。
軸は何本あってもいいですが、「芝居を打つ」という太い軸を、自らの真ん中に据え続けることは、難しいものなのだと解って来ました。

さて、それならどうするか。どんな工夫をしていこうか。
そう考え始めた頃、COVID-19の波が押し寄せて来ました。
2020年は、定期公演を全て中止の判断となり、定期稽古もままならない状況になりました。
各自、家で訓練は続けてください、と仮に伝えたところで、「暮らし」の維持の中で、それが出来たメンバーは何人居ただろうかと冷静に思います。
感染症蔓延の収束を感じぬまま、2020年の秋を過ぎ、私は一つの覚悟を又しました。
これまでの遣り方で進むことは出来ない。劇団組織が解体してしまう前に、手を打たなければ、と。
一年間動かしていない「劇団」は、必ずのパワーダウンをしています。
演劇は、「長期で鍛錬を止めれば、劣化から復帰する為にかなりの時間が要る」のです。
それなら一度、(結局は打てない、もしくは打つ為には巨大なリスクを抱えねばならない)無理やりな「公演活動」を止めて、「基礎力の再獲得・向上」に徹する期間を作ろうと。腹を括りました。

第五期構成員にはすみやかに連絡をしました。
2020年12月末日をもって第五期を終了し、2021年は初心に戻って「基礎練」の「定期稽古」しかやりません。公演も打ちません。その期間は、全構成員が「練習生期間」となります。
この方向転換の中で、(いつか再び戻って来る意思を持っていたとしても)いかなる事情であれ「練習生の本懐=基礎練の徹底」に時間の割けない人は、2020年12月末日に、一旦の「卒業」(退団)としてください。…と。
そして、残った者もあれば、残らなかった者もいます。
盛大な卒業式も時節柄できませんでした。けれど、通常の「退団」とも又違いますので、私には、ネガティブな感情の湧きようは、ありませんでした。

2021年は、ユメホにとっては「第六期」ではありません。ただ淡々と基礎訓練を行う、数字のない「一年間」です。
どうせなら、ということで、ユメホに関連する人たち以外の皆様にも門戸を大きく開いた『基礎練会』を月に4回、主催することにしました。
練習生としてユメホに籍を置いたままの人も、又、「卒業」した人も、そしてユメホの外の人も、皆で(来れる範囲で)『基礎練』だけにフォーカスした「定期稽古」をやろうじゃないか、と。
こんなことは今までやったことがありません。ユメホが1993年より培ってきたメソッドを「ユメホの外」に大々的に出すことはしてきませんでした。(これまでの客演さんに対してもしたことがありません。)
これまで「ユメホの内」にのみフォーカスしてきた「基礎力の劣化を招かない為の基礎練習反復の機会」を、外部に対して封印切をします。
COVID-19の波で、稽古が出来ていないユメホの外の同志と共に、「基礎力の再獲得・向上」を目指す年にしたいと思います。
だって、「長期で鍛錬を止めれば、劣化から復帰する為にかなりの時間が要る」からです。
どうか、私たち皆の土壌が、焦土になってしまわないように。

ユメホは、こうすることに決めました。

ユメホ「第六期」は、2022年からのスタートを考えています。
予想だと、顔ぶれは大きく変わるだろうな、と。
そうであっても、夢歩行虚構団の芯は、何も変わりません。
合言葉はずっと、「芝居に真摯であれ。」
軸は多くあっても良いので、その中の一本を芝居の真ん中に据えられる人たちと、据えられる方法を模索して、工夫して、一生懸命に芝居を打っていきます。

「卒業」をした構成員の皆、お疲れ様でした。いつかまた、一緒にお芝居をしましょう。
そして、「練習生」として残った構成員の皆、ゴリゴリと基礎を再び堅固に調えて行きましょう。
そしてそして、新たに出会う皆様、土壌を痩せさせない為に、先ずは自らを鍛えて花を咲かせ、実りを得ましょう。共に。


―――2021年1月 夢歩行虚構団 座長 だるままどか
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。